さいきのその日暮らしラジオ
会社員に戻った日、僕は負けを認めました
の放送
今回のラジオでは、今年に入ってからの話をしていたんですが、喋りながら自分でも「ああ、ここだったのか」と思った場面が一つだけありました。会社員に戻った日のことです。今日はその話だけ書きます。
34歳のときでした。会社を潰して、自己破産して、お金がないような状態。その前の年には大好きだった自分の車も維持できなくなって売却していました。30歳でけっこういい車を買って、俺の人生イケイケだみたいな感じで思っていたんですよ。20代はいくら苦労してもいい、30代は花が咲く時期だ、今は種まきなんだって、勝手にそう思っていました。それが34歳で全部なくなった。
それでも家族がいるので、生活は止められません。それで会社員になりました。
ただ、僕の中では会社員になるというのは負けだったんです。なっちゃいけないものだと思っていた。負け組だと思っていたんですよ。20代のときにあれだけ「最短最速で成り上がる」「資本主義で成功する」と言っていたのに、結局うまくいかなくて、戻っちゃったと。そうじゃないと生活が維持できないんだと。
だから、嫌々でした。正直、嫌々だったと思います。
ただ、その嫌々のなかで、ひとつ表現が変わったんですよね。「自分はもう独立できない」ではなくて、「今はできなくなっちゃったんだな」。この言い方がいちばん正しい気がします。どうせ会社員になっても、また俺はやめて独立するんだろうなとは思っていました。でも、今はできない。それを認めた。あれが僕にとって、負けを認めるということでした。
諦めた、という言葉を僕はよく使うんですけど、それは「金持ちになんかなりたくない」みたいな投げやりなものじゃないんです。無理に手に入れようとするのをやめる、という意味です。その最初のきっかけが、会社員になったことでした。
そこから1年2ヶ月、会社員をやりました。
その間に何が起きたかというと、気持ちが落ち着いてきたんですよ。絶対に無理にでも独立しなきゃいけない、という考えがなくなっていった。ずっと背伸びしてたのが、結局うまくいかなくて戻ってきたわけだから、もうここでいいかっこしようにもできないじゃないですか。できないんだから、張らなくていい。そうやって少しずつ、肩の力が抜けていった感じでした。
それまでの僕は、ずっと「足りない」で動いていました。理想と今の自分にこれだけ差があるんだから、どう埋めるんだと。その答えがどこかにあるはずだと思って、占いとか、人生哲学とか、自己啓発的なものをむさぼるようにインプットしていました。鬱みたいな状態だったときです。でも、人生が好転したかというと、別にそんなことはなかったんですよね。外から入れようとしていただけでした。
仕事自体は、できていた方だったと思います。まあまあ良かったのかもしれない。ただ、生き方にマッチしなくて、2025年の9月に辞めました。それから半年近く、わりとプラプラ遊んでいました。
今年の3月くらいに、知り合いの工務店の社長とご飯を食べているときに「自分どうするんだ」と聞かれて、前の会社でやっていた業務をこういうやり方でやろうかと思います、と話したら、「じゃあちょっとぜひうちもやってくれよ」と言ってもらえた。それが最初のお客さんです。仕事の中身は、建設会社向けの、採用まわりの地味な話です。
そこから問い合わせが来るようになりました。やったことといえば、なんとなくホームページを作って、クラウドワークスとかココナラに「自分はこういうことができますよ」と載せておいただけです。作るのが面倒だったので、それも全部作っといてと丸投げしていました。本当にそれだけなんですよ。
なのに向こうから来る。この感覚、今まで1回もなかったんです。
僕が習ってきたのは、興味がないであろうお客さんに、こっちからアプローチして、こういうセールストークを言えば興味を持つから、という方法だけでした。10年前に情報商材を買って学んでいた頃なんて、もっとひどくて、お客さんに「今これを買わないといけない」と思わせる方法しか習っていなかった。そういう教わり方をすると、どういう考え方になるかというと、自分が儲けるために行動するようになるんですよね。奪い取る感じというか、無理やり売ってる感がどうしても拭えなかった。
今は、契約しましょうなんて一言も言っていないのに、向こうから「どうやったら支援してもらえるんですか」と聞いてくる。金額も、相手の会社の規模をなんとなく推測して、その場のノリで決めています。新卒を雇うのと同じくらいくださいと言って決まった会社もあるし、高すぎるかなと思って12万ですと言った会社もある。それで普通に決まるんですよ。
僕が儲けようと思っていないのに収入が増えていく。これが商売の原理原則で、本来こうあるべきものだったんだな、と思いました。
で、戸惑っているんです。マジで戸惑っています。だって、むっちゃ頑張ったわけじゃないので。今の僕は片肘張ってなくて、なんでもいいや、どっちでもいいや、くらいのスタンスです。20代の頃は完璧主義があって、先輩に「60%の出来でいいから出せ」と言われてもできなかった。もっと良く、もっと納得いくまで、とずっとやっていました。たぶん今もそれをやっていたら、こうはなっていないと思います。
このやり方で僕が持てるのは、だいたい20社くらいが限界だと思っています。20社を超えたら手を抜き始めるかもな、と自分で分かっているので、無理に営業はしないつもりです。そのくらいの規模の話です。うまくいっていることだけ言えば大きく聞こえますけど、要は僕一人でできる範囲の、地味な仕事なんですよ。
今あらためて振り返ると、全部、会社員をやったからなんですよね。当時の目線で言えば、会社を潰して、自己破産して、嫌々会社員になって、人生はどんどん下がっているはずでした。でも、あのとき諦めることができて、やりたくないと思っていたことを受け入れてやったことで、自分ができる業務が増えて、コントロールできる領域が増えた。それは成長だったんだと思います。
成長って、上に上がっていく過程で手に入るものだとずっと思っていたんですけど、違いました。一度や二度じゃなく、何回も落ちないと手に入らないものがある。だから僕は、自己破産してよかったと本気で思っています。2回やりましたけど、しないで済むならしたくはなかった。ただ、したことで得たものは確実にありました。
捨てないと新しいものは入ってこない、ってよく言うじゃないですか。あれ、本当にうまく言えてるなと思うんですよ。小さいプライドで「自分で作った借金だから自分で返すんだ」と執着していたら、ずっと現状は変わらなかった。会社員になりたくないというプライドも同じでした。
状況が悪いとき、人はそれを強制的に変えようとして、慣れていない行動をしがちです。お金がないのに借金して教材を買うとか、スクールに入るとか。僕もやったので分かります。でも、流れが悪いときって、すでに今持っている何かが悪いんですよね。だったら、外から入れるより先に、一つずつ見て、このこだわりもういらないんじゃないか、この執着もういらないんじゃないかって捨てていくほうが早い。喋りながら、それが結局いちばん速いんだなと思いました。
こういうのは、昔から言われていたことなんですよ。聞いたこともあった。でも、自分が経験するまでは絶対に掴めなかった。だから成功者の本を読んでも意味がないとよく言われるんでしょうね。僕は賢者でも優秀でもないので、経験しないと何も学べませんでした。
今は、引っ越しも検討しています。今の家賃の1.5倍から2倍くらいは払えるなという感覚にはなってきました。ただお金の優先順位が違うので、すぐにはしません。1年以内にはしちゃうだろうな、くらいです。
会社員に戻ったあの日、僕は自分のことを負けたと思っていました。でも今思えば、あれは負けというより、ようやく手放せた日だったんだと思います。何かを捨てないといけない場面に立っている人がいたら、それは下がっている最中じゃないかもしれない、ということだけ、置いておきます。
現場からは以上です。